オンライン・ワークショップの勘所
オンライン・ワークショップは機能するのか?
新型コロナウイルス感染拡大防止のために出された緊急事態宣言による外出自粛要請に伴い、弊社においてもオフラインでのリサーチのほとんどがオンラインに切り替わっており、概ね問題なく実施できています。このような状況下で、各社様からワークショップを実施したいが、
オンラインでできるの?上手くワークするの?といったお問合せを多くいただいています。
結論から言いますと、インデックス・アイでの実施した経験からは、
オンラインであってもワークショップは機能する、と考えています。
オフラインorオンラインかの方法論よりも重要なことがある
このような環境下では、ともすると方法論に目がいきがちになりますが、ワークショップの実施において最も重要なことは、目的・ゴールイメージを明確に設定すること、そして参加メンバーに共有し、共通認識をもってもらうことです。
言わずもがなではありますが、オフラインorオンラインのいずれかを問わず、ワークショップの成否の大部分はここにかかっていると言っても過言ではないと実感しています。
加えて、参加者への事前のインプット、当日の目線合わせのための共有内容(調査結果の要点をまとめたスライドやオンラインインタビューやホームビジットの様子の映像等)も手法を問わず大事なことと言えます。
オンライン・ワークショップならではの重要なポイントは主に5つ
目的・ゴールイメージを明確にし、参加者に共通認識をもってもらった上で、
オンライン・ワークショップを如何にワークさせるかのポイントは主に下記の5つが挙げられます。
①チャット機能の活用
②ファシリテーター/書記の役割の明確化
③休憩時間の活用
④ルームの複数設定
⑤ビデオ通話の活用
参加者の意見や考えを広く吸い上げる(発散)にはチャット機能を活用する
ワークショップでは、参加者の様々な意見や考えを出し合い発散することが重要になりますが、オフラインの場合の多くはこれを付箋ワークにより行っていました。しかし、オンラインではこの付箋の書きお越しが難しい状況になります。そこで、Skype、Teams、ZOOMなどに備わっているチャット機能を利用して、広く参加メンバーの意見や考えの見える化を行うことは有効な方法になります。
特にオンラインでは、同時に発言すると聞き取りにくいため、付箋ワークと同じように個々人がチャットで自身の意見や考えを出し合ったり、あるメンバーが発言している際に、その発言に対して感じたこと(共感や異論・反論等)をチャットで挙げてもらうことで議論の円滑化や活性化が図られます。
挙げられた意見の集約・整理(収束)は、書記のレベルに左右される
参加者の意見や考えの発散は、発言や上述のチャット機能で行いますが、挙げられた意見を集約する・整理する(収束)ことも必要になります。その際に重要な役割を担うのが書記です。書記は、挙げられた意見を端的に箇条書きレベルで書き起こし、且つ議論の状況をみながら、書き起こしの内容を強調したり、わかりやすく整理しなければなりません。この見える化された内容が有るか無いか、またその精度のレベルによって、更に議論が深められるかが変わってきます。書き起こしのスピード力はもとより、いかに発言の中の重要な点を表現できるかの能力が問われ、弊社で実施の際は、こうした能力が備わっているスタッフが書記を担うことに留意しています。
ファシリテーターに関しては、状況によるところもありますが、基本的にファシリテーターが書記の役割も同時に担うことは難しく、得策ではないと判断しています。スムーズな運営においては、ファシリテーターは、アジェンダに沿った進行と目的を念頭にした議論の活性化に注力した方が良さそうです。
議論のまとめや構造化は、休憩時間を上手く活用することで対応できる
ワークショップはアジェンダにも拠りますが、半日、長ければ1日要することもあります。しかしながら、人間の集中力は長続きしませんので、適宜休憩をとることが必要になりますが、これはオンラインでも同様のことだと思います。実際に参加された方からのお話しでも、オンラインの方が集中力が続かないかもしれない、といった声も聞かれました。
そこで、適宜休憩を確保することがオフライン同様大事なことになりますが、弊社ではこの休憩時間を利用して、運営側の主要メンバーが休憩前までの議論をスライドに整理・構造化し、休憩後に参加メンバーに共有するようにしています。運営側としては少々大変な面はありますが、このような対応をすることで、その後の議論がスムーズに進み、活性化することにも繋がっています。
参加メンバーが多い場合は、複数のオンラインルームを設定する
ワークショップを実施する意図の一つに、様々な役割の方が各々の立場で意見・考えを出し合うことで多くの気づきが得られ、その後のアクションの精度を向上させること、が挙げられます。
このようなことから、ワークショップのテーマによっては参加人数が多くなるケースがあり、オフラインでの実施の場合は、数人単位のグループを設けることで議論のスムーズ化を図っていました。この点に関しては、オンラインにおいても人数が多くなり過ぎると、同様にディスカッションが上手く機能しませんでした。この問題への対応策は、Teams、ZOOMなどで、グループ数(各グループ4~6人程度)と同じ数のオンラインルームを用意し、そこで各グループにて議論をしてもらうことで解決できます。
更に、グループ間でのプレゼンのために別途全体のルームも用意しておきます。そうすることで、グループ間の共有がスムーズに行えます。これも参加者全員が同じ目的・ゴールに向かって進める上での一つの工夫になります。
顔が見えることは発言のし易さや参加意識の向上に繋がる
オンラインのシステムでは、音声だけでのやりとりも可能ですが、ワークショップにおいては、ビデオ通話をオンにすることをお勧めします。お互いの顔が見られる状態で議論することは、発言者にとっては他のメンバーの反応がわかり安心感に繋がります。また、聞いている側が、うなずいたり、「そうだね、なるほど」と一言添えるだけで話しやすい雰囲気も醸成されます。
また、音声通話のみの場合は、顔が見えていない(状況が見えていない)ため、ある意味気の緩みが生じ、参加意識が低下することも考えられます。適度な緊張感を維持する上でも顔が見られる状態での議論の方がワークショップでは向いていると思われます。
改めて...新型コロナウイルスの影響によってではあるものの、オンラインでのワークショップを多く実施したことで実感できたことがあります。それは、オンラインorオフラインに関係なくワークショップはビジネスを前進させる上でやはり必要な方法論であるということです。
そしてなによりもプロジェクトメンバーのみなさんとディスカッションできることは、やっぱり楽しい!ということです。個人的にはこれが一番実感できたことかもしれません。